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絶縁油の劣化診断
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資料07_1 絶縁油の劣化診断
  1. 絶縁油の試験
    自家用需要家が保守、点検のために行う絶縁油の試験には、絶縁耐力試験及び酸価度試験が一般に実施されている。
    絶縁油、特に変圧器油は、使用中に次第に劣化して酸価が上がり、抵抗率や耐圧が下がるなどの諸性能が低下し、ついには泥状のスラッジができるようになる。変圧器油劣化の主原因は、油と接触する空気が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化であって、この酸化反応は変圧器の運転による温度上昇によって特に促進される。そのほか、金属、絶縁ワニス、光線なども酸化を促進し、劣化生成物のうちにも反応を促進するものが数多くある。
    絶縁油を取り換える際には、JIS C 2101(電気絶縁油試験方法)に合格したものであるかどうかに注意し、また不明なものあるいは長時間使用しているものにあっては、試験を行い、判定基準に適合するか否かを確認しておく必要がある。
    以下、絶縁油の各試験結果による劣化判定基準を示す。
  2. 絶縁油の劣化判定基準
    @ 絶縁耐力試験
     絶縁耐力は、7-1表の基準により判定する。
    7−1表 絶縁耐力の判定
    区   分 絶縁破壊電圧 摘    要 試験方法
    使用中の油 新油 30kV以上 - JIS C 2101
    により行う。
    良好使用可 20kV以上 -
    要注意使用可 15kV以上〜20kV未満 機会を見てろ過又は取替えを要請する。
    不良使用不可 15kV未満 至急取替えを要請する。

    A 酸価度試験
     酸価度は、7-2表の基準により判定する。
    7−2表 酸価度の判定
    区   分 全酸価(mgKOH/g) 摘    要 試験方法
    使用中の油 新油 0.02
    (JIS C 2320 による)
    - JIS C 2101
    により行う。
    良好使用可 0.2以下 -
    要注意使用可 0.2〜0.4 機会を見てろ過又は取替えを要請する。
    不良使用不可 0.4以上 至急取替えを要請する。

  3. 変圧器の絶縁油の油中ガス分析及びフルフラール分析による劣化診断
    @ 油中ガス分析
     変圧器内部での異常は、その場所で局部的な発熱を伴い、これに接する周囲の絶縁物(絶縁油、絶縁紙、プレスボード、合成樹脂、ワニスなど)は、その熱によって熱分解され分解ガスを発生する。
     それは、絶縁材料の種類と発熱温度によって発生ガス量が変わり、これらのガスの一部は油中に溶解し、残りのガスは油外に放出される。その油中に溶け込んだ発生ガスをガスクロマトグラフで分析する。
     油中ガス分析による劣化診断は、7-3表の基準により判定する。

    [注] 電気共同研究会「第54巻 第5号 その1 油入変圧器の保守管理」 似置ける判定基準は、異常が存在していると確認した機器で検出されたガスに注目して判定値を定めている。


    7-3表 油入変圧器の油中ガス分析試験における判定
    判定基準 ガ ス 量 (ppm)
    総可燃ガス
    TCG
    一酸化炭素
    CO
    水素
    H2
    メタン
    CH4
    アセチレン
    C2H2
    エチレン
    C2H4
    エタン
    C2H6
    要注意T 500 300 400 100 0.5 10 150
    要注意U 次のいずれか一つでも適合する場合
    @ C2H2 ≧ 5
    A C2H4 ≧10 かつ TCG ≧ 500
    異常 次のいずれか一つでも適合する場合
    @ C2H2 ≧ 5
    A C2H4 ≧ 100 かつ TCG ≧ 700
    B C2H4 ≧ 100 かつ TCG増加量≧70/月


    A 絶縁油中のフルフラール分析
     油入変圧器の寿命は、コイル絶縁紙の引張り強さが初期値の60%にまで低下した時点といわれている。絶縁紙の劣化が進行すると、紙の引張り強さや平均重合度(繊維素の長さ)残率などの諸特性が低下するとともに、CO2+COやフルフラールなどの劣化生成物が発生する。これらの諸特性の低下と劣化生成物の量との間には一定の関係があり、フルフラール生成量と平均重合度残率との間に明らかな相関関係が成立することも確認されている。
     従って、対象とする変圧器から少量の絶縁油を採取して、高速液体クロマトグラフで分析し、フルフラールの生成量を求め、この値から平均重合度残率を推定して、変圧器の経年劣化度を診断することができる。
     CO2+COは油中から逃げたり、脱気処理により油中に残る割合が低くなるなど、多少問題があるとされているが、フルフラールは油中に安定して溶解しているので正確な分析診断ができる。
    絶縁油中のフルフラール分析による劣化診断は、7-4表の基準により判定する。

    7-4表 変圧器経年劣化度診断指標
    方   法 油中フルフラール量
    mg/g
    参    考
    CO2+CO量(ml/g)
    範  囲 正   常 <0.002 <0.42
    要 注 意 0.002〜0.034 0.42〜1.7
    危   険 >0.034 >1.7

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