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高圧ケーブルの保守・点検方法
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資料07_2 高圧ケーブルの保守・点検方法
  1. 対象とするケーブル
    3,300V及び6,600V用のゴム・プラスチックケーブル(主にCV・CVTケーブル)
  2. 劣化状態試験方法
    劣化状態を試験する方法には、大きく分けて非電気試験と電気試験とがある。これら二者を細分すると次のようになる。
    非電気試験 破壊試験 構造試験
    材料引張り等の物理試験
    トリーの観察
    非破壊試験 外観等の調査(硬化、軟化、溶解、膨潤、変色、外傷等)
    電気試験 破壊試験 商用周波数破壊電圧試験
    インパルス破壊試験
    非破壊試験 絶縁抵抗試験
    直流高圧絶縁抵抗試験(直流漏れ電流測定等)
    誘電正接試験(tanδ試験)
    耐電圧試験
    部分放電試験(コロナ試験)
     この両試験のうち、破壊試験は材料の採取等が必要となるため、非破壊試験による劣化判定が一般に用いられている。非破壊試験では、装置の汎用性や測定精度、いわゆる雑音・誘導等についての検討が必要となる。現場への適用性を考えた場合、判定基準があること、取扱いが簡単なこと、雑音・誘導を受けにくいこと、短時間での作業が可能なこと等が必要な要件となる。現状においては、現場での適用性から、外観の点検、絶縁抵抗測定と直流高圧絶縁抵抗(漏れ電流)測定との併用が代表的試験といえる。また、電気試験としての各種測定の長所・短所は、7−5表のとおりである。 
    7-5表 電気試験(非破壊試験)の長所と短所
    試験法 長所 短所
    絶縁抵抗試験 ・取扱い簡単、熟練要せず
    ・絶対値で劣化判定可能
    ・局部的劣化の検出不能
    ・微小な劣化は検出不能
    直流高圧絶縁抵抗試験
    (漏れ電流法)
    ・取扱い簡単
    ・高圧印加できるので局部的劣化もある程度検出可能
    ・熟練要す
    ・回路条件の検討要
    誘電正接試験
    tanδ
    ・取扱い簡単
    ・絶対値で劣化判定可能
    ・全長的な吸水、熱劣化検出には良い
    ・装置が若干大掛かり
    ・局部的劣化は検出不可能
    ・平均的な劣化の検出になる
    ・外来雑音等の除去が必要
    ・回路条件の検討要
    交流耐電圧試験 ・判定基準が明白
    ・使用条件での測定ができ実際的
    ・局部的弱点検出可能
    ・装置が大掛かりで現地試験不向き
    ・合格しても長期寿命の保証にはならない
    ・特性変化状況がわからない
    ・試験中弱点を劣化させるおそれあり
    直流耐電圧試験
    (直流高圧法)
    ・判定基準が明白
    ・局部的弱点検出可能
    ・実用波形と違い交流と比べ信頼度は低い
    ・合格しても長期寿命の保証にはならない
    ・特性変化状況がわからない
    ・試験中弱点を劣化させるおそれあり
    部分放電試験
    コロナ
    ・外傷のようなボイドなどの局部的欠陥の検出に良い ・取扱い複雑で熟練要し現場試験は不向き
    ・吸水、熱劣化などの全体的な劣化検出には不向き
          
  3. 活線下における絶縁劣化診断法
    活線下における各種の絶縁劣化診断法が開発されており、その概要を7-6表に示す。
    7-6表 活線下の絶縁劣化診断法
    診断法 測定方法 測定上の注意 判定基準
    ・直流成分法
    ケーブルに交流電圧を印加した時、水トリーが発生しているとその整流作用によって直流電流が生じる。この原理を利用して活線状態で遮蔽層接地線を流れる直流電流成分を測定し判定する。
    ローパスフィルターを用いて接地電流中から直流成分を検出する。 迷走電流の影響に注意する必要がある。 <良>
    ・直流成分が1ηA未満
    <要注意>
    ・1〜100ηA未満
    <不良>
    ・1ηA以上
    ・波形変動が大きいもの
    ・直流重畳法
    直流電圧の重畳により絶縁体及びシースの劣化度合を診断する
    (遮蔽層の導通抵抗も測定可能な装置もある)
    <ブリッジ法>
    EVTの中性点から50V程度の直流電圧を重畳し、ケーブルの絶縁抵抗を1辺とするホイーストンブリッジを構成し、絶縁抵抗を測定する。
    <直流重畳電流測定法>
    EVTの中性点から50V程度の直流電圧を重畳し、直流電流を測定する。最近では高圧配電線の1相よりインダクタンスを介して数Vの直流電圧を重畳する方法もある。
    <シース絶縁抵抗>
    数Vの直流電圧を、遮蔽層と大地間に課電し、流れる電流値を測定する。
    測定対象は遮蔽層が1点接地が可能なケーブルであること。
    測定時には必ず測定装置を介しコンデンサ接地とする。雨天時屋外では測定しない。
    <ブリッジ法>
    <良>
    10GΩ以上
    <要監視>
    3GΩ以上10GΩ未満
    <要注意>

    3GΩ未満
    <直流重畳電流測定法>
    <良>
    3GΩ以上
    <要監視>
    300MΩ以上3GΩ未満
    <要注意>
    300MΩ未満
    <シース絶縁抵抗>
    <良>
    1MΩ以上
    <不良>

    1MΩ未満
    ・活線tanδ法
    活線下でtanδ、遮蔽層絶縁抵抗を測定して絶縁体と遮蔽層の劣化度合を診断する
    被測定ケーブルにかかる電位の信号と充電電流信号の位相差からtanδを算出する。ケーブル遮蔽層と大地間にDC5V程度を印加し、その電流を測定し、遮蔽層絶縁抵抗を算出する。 測定対象は遮蔽層が1点接地が可能なケーブルであること。 tanδ
    <良>
    <不良>

    遮蔽層絶縁抵抗
    <良>
    <不良>
    ・脈動検出法
    遮蔽層接地線から、ケーブル劣化により生じる商用周波数より低い成分を検出し、診断する
    遮蔽層接地線に流れる電流から商用周波成分を除去し、1Hz信号電流、遮蔽層絶縁抵抗及び遮蔽層の対地交流電圧を測定する。 ・遮蔽層絶縁抵抗1MΩ未満診断不能
    ・遮蔽層接地が多点接地ならば診断不能
    ・0.2ηA以上の場合、停電測定を推奨
    ・遮蔽層絶縁抵抗1MΩ以上良
    ・低周波重畳法
    低周波電圧を重畳し、遮蔽層接地線から低周波成分の損失電流を検出し、劣化判定する
    7.5Hz,20V電源をEVT中性点等から重畳し、遮蔽層接地線から低周波成分の損失電流を検出し、劣化判定する。 測定対象は遮蔽層が1点接地が可能なケーブルであること。
    雨天時屋外では測定しない。
    <良>
    1000MΩ以上
    <要注意>
    400MΩ以上1000MΩ未満
    <不良>

    400MΩ未満
    <判定不能>
    遮蔽層絶縁抵抗10KΩ以下
    ・交流重畳法
    遮蔽層に特定周波数の電圧を重畳し、水トリー実態に対応した発生微小電流を計測して診断する
    遮蔽層接地線に商用周波数の偶数倍+1Hzの電圧を重畳し、水トリー劣化に対応して発生する1Hzの劣化信号を測定する <良>
    10ηA未満
    <不良>

    10
    ηA以上
    <判定不能>
    遮蔽層絶縁抵抗250KΩ以下

  4. 代表的な試験方法
    @ 絶縁抵抗計による測定方法
    1. 絶縁体抵抗測定
      1,000〜2,000V絶縁抵抗計を使用し、各導体と遮蔽層(大地)間の絶縁抵抗を心線別に測定する。


    2. シース抵抗測定
      金属遮蔽層又は金属シースと大地間に500〜1,000V絶縁抵抗計により測定する。
    3. 測定上の注意事項
      ・測定前に絶縁抵抗計を動作させ、その出力リードを開放として指示値が∞を示し短絡して0Ωを指示することを確認後、ケーブルに接続する。
      ・電圧印加直後は、ケーブルに充電電流が流れるため抵抗値が低く指針が不安定であり、測定は充電時間を一定(通常1分値)に保って行う。
      ・測定後は、ケーブルの導体を接地し残留電荷を放電すること。
      ・測定に際しては、両端末に接続されている機器類を取り除く。
    4. 絶縁抵抗判定目安
      絶縁抵抗法による判定目安は、7-7表に示す。
      ケーブル 要注意
      絶縁体 CV 2,000MΩ未満
      BN 100MΩ未満
      シース CV 1MΩ未満
      BN 0.5MΩ未満


    A 高圧絶縁抵抗計(G端子接地方式)による高圧ケーブル絶縁劣化診断方法
    G端子接地方式は、高圧ケーブルに他の高圧機器を含む電路を一括して測定する場合に適用する。測定例は7−2図のとおりであり、CVケーブルの場合の劣化状況判定の目安を7-8表(5,000Vで測定する場合)及び7-9表(10,000Vで測定する場合)に示す。

    7-8表 高圧ケーブル絶縁抵抗の一次判定基準(5,000Vで測定時)
    ケーブル部位 測定電圧(V) 絶縁抵抗値(MΩ) 判定
    絶縁体(Rc) 5,000 5,000以上
    500以上〜5,000未満 要注意
    500未満 不良
    シース(Rs) 500又は250 1以上
    1未満 不良


    7-9表 高圧ケーブル絶縁抵抗の一次判定基準(10,000Vで測定時)
    ケーブル部位 測定電圧(V) 絶縁抵抗値(MΩ) 判定
    絶縁体(Rc) 10,000 10,000以上
    1,000以上〜10,000未満 要注意
    1000未満 不良
    シース(Rs) 500又は250 1以上
    1未満 不良


  5. 直流漏れ電流測定法
    @ 測定方法
    7-3図に示す測定回路にて、直流高電圧発生装置により、各々の導体と遮蔽層間に直流電圧を印加し、漏れ電流の時間的変化を測定自動記録する。この測定により次の項目のデータを取ることができる。
    ・漏れ電流値(μA)=電圧印加時間の最終電流値
    ・漏れ電流(μA/km)=漏れ電流値μA/線路亘長m×1000
    ・相間不平衡率(%)=(三相の漏れ電流の最大値-最小値)/三相の漏れ電流平均値×100
    ・成極比=電圧印加1分後の電流/電圧印加後規定時間の電流
    ・弱点比=第1ステップ電圧の絶縁抵抗/第2ステップ電圧の絶縁抵抗
    ・キック現象=電流-時間特性上の電流の急激な変動
    以上のように各種の劣化判定の算出があるが、一般的に漏れ電流値及びキック現象の有無により判定することが代表的といえる。

    なお、3kV3心ケーブル(一括遮蔽形)は、測定側と反対の終端ガード電極リード線として、平行に布設されている別回線のケーブル、又はガード用リードケーブルを仮設して行うことが望ましい。

    A 測定電圧及び測定時間
    一般的な測定電圧は、7-10表に示す。なお、測定に当たってはまず第1ステップで測定し、劣化の徴候がみられなければ第2ステップの測定を行う。
    7-10表
    定格電圧 測定電圧 測定時間
    第1ステップ 第2ステップ
    3,300V 3kV 5kV 5〜10分
    6,600V 6kV 10kV
    「備考」布設年数によっては、測定電圧を考慮する必要がある。

    B 測定上の注意事項

    測定する漏れ電流はμA単位の微小電流であるから測定に際して誤差のないよう最新の注意を払うことが必要である。
    1. 高電圧露出部からの気中放電をなくすため、突起部は絶縁ゴムテープを巻くか、シールドリング等を取付けること。
    2. 高圧リード線には、裸線を使用しないこと。(気中放電防止のため)
    3. 接地物との空間距離(クリアランス)は、十分にとること。
    4. ケーブルの終端部の表面を清掃しガード電極を設けること。
    5. 測定した漏れ電流にセットリーク・リード線の気中放電電流及び終端部表面リーク等が含まれていると正確な絶縁体診断ができなくなるので十分注意すること。

    C 直流漏れ電流判定目安
    直流漏れ電流法による測定チャート例は、7−4図に示し、判定の目安として次のようなことがいえる。
    1. 漏れ電流のチャートでキック現象が見られるもの要注意(7−4図-c)
    2. 漏れ電流が時間とともに増加するもの要注意(7−4図-b)
    3. 漏れ電流値にする判定目安は、7−11表に示し、線路亘長が1,000m以上の場合はkmで換算した値を用いる。

    7-11表
    ケーブル 要注意 不良
    CV 1.0μA以下 1.0〜10 10μA以上

電気保安index>

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