Text: /電気保安index> 受電設備基準 > 高圧機器種々の点検方法・劣化診断
資料07_3 種々の点検方法・劣化診断
- 制御回路絶縁抵抗測定によるG付PAS劣化診断
- PASの内部構造は、概ね−5図のようになっており、メーカーの撤去品調査等でPAS内部に水分が浸入した場合、制御回路内の過電流検出部スイッチや端子台等に水分が付着し、対地間絶縁抵抗が低くなることが確認されている。このため、7−6図のように、制御箱内の制御回路端子からトリップコイル(一般的な表示の端子番号Va,Vb,Vc)の対地間絶縁抵抗を測定しPAS内部への水分浸入の有無を判定することが可能となる。判定の目安値については、7-12表のとおりである。なお、測定の際には制御線を端子台より外さないと回路の回り込み等により正確な測定値を得られないので注意が必要である。
また、PAS内部への水分浸入によりトリップコイルが腐食断線、又はレアショートして抵抗値が変化することを確認するため、補完策としてトリップコイルの抵抗測定を合わせて実施することが望ましい。

7−12表 劣化判定の目安
|
要取替 |
要注意 |
トリップコイルの絶縁抵抗 |
1MΩ以下 |
1MΩ〜100MΩ未満 |
トリップコイルの抵抗 |
∞(断線) |
管理値外 |
- 赤外線放射温度計による温度測定
- 過負荷、接触不良などによる過熱状態を確認する方法として赤外線放射温度計による温度測定があり、測定器の一例を7−7図に示す。

- 停電を伴わない継電器試験
- 地絡継電器(GR)、過電流継電器(OCR)は、高圧受電設備の保護継電器として一般的であるが、共に事故電流を検出してトリップコイルを励磁することで遮断装置を動作させている。このため、トリップコイルを回路から切り離せばリレーを単体として取り扱うことができ、停電を伴わず動作試験を実施することが可能となる。7−8図にGRとOCRの切替端子による単体試験の概念を示す。図のような切替端子を取付けた場合、常時は常用プラグによりトリップ回路を形成し、試験時には試験プラグによりトリップ回路を切り離してリレー単体として取り扱うことが可能となる。

- 活線絶縁診断
@ 超音波式放電探知器による高圧絶縁診断
- 部分放電測定は、診断の一つの手法と考えられる。
一般的には、被測定物に結合コンデンサ等を接続した上で電圧を印加し、部分放電開始電圧、部分放電消滅電圧、放電電荷量、発生頻度などを測定して絶縁劣化状態を判別する。部分放電の検出は、活線状態においても測定することが可能で、高周波CT,超音波検出、電磁波検出等の方法により測定され、診断の一手法となる。
簡易的に用いられる測定器として、部分放電による超音波を検出し、その音圧を比較して劣化診断を行う測定器の一例を7−9図に示す。
A 零相電圧・零相電流検出による高圧絶縁診断
- 地絡方向継電器と同じ検出原理で、検出感度を高めることにより絶縁状態を監視するものである。7−10図に一例を示す。

配電線系統は、配電線の地絡事故の有無に係らず、各相における使用負荷の不平衡などから零相電圧(Vo)、零相電流(Io)(この場合のVo、Ioを残留電圧、残留電流と呼ぶ)が存在する場合が少なくない。しかしながら、絶縁劣化診断としてVo、Ioを利用するには数V,数mA程度の需要家内部の漏れ電流を正確に測定しなければならない。この際、残留電圧、残留電流が存在すると純然たる需要家内部絶縁劣化を検出することができず劣化診断に悪影響を与えることになる。このため、ここに紹介した装置では、残留電圧と残留電流の変化を記憶し、演算処理することで残留電圧と残留電流を除去することでその影響を取り除き、需要家構内での地絡電流を測定するようにしている。
B 絶縁監視装置(低圧)による低圧絶縁診断
- 絶縁監視装置は、地絡事故によりB種接地に帰還する漏洩電流を検出することにより絶縁状態を監視する装置である。Io方式とIgr方式があるが、Io方式は従前から存在する漏電火災警報器と同じ原理で漏洩電流を監視する装置である。7−11図に原理図を示すが、使用設備において絶縁不良が発生した場合、大地、B種接地を経由して閉回路を構成し、電流が流れることがわかる。この電流をCTにより検出するのがIo方式である。

しかしながら、近年、使用機器の電源フィルタに使用されるコンデンサ等の影響で、見かけ上の漏洩電流が増加するケースが多くなっている。このため、Io方式での絶縁監視が難しくなり、これに対応するため考えられたのがIgr方式である。Igr方式の概念図を7−12図に示す。Igr方式は、設備の絶縁状態を監視するために一定の監視用電源を注入し(図ではe(V),f(Hz)),この電源に対する漏洩電流を測定することで絶縁状態を監視している。静電容量分は内部演算分離回路により除かれ、抵抗分の漏洩電流(Igr)を演算し絶縁状態を監視するものである。
|