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北米大停電(アメリカ・カナダ東部)
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Text: /電気保安index > 波及・停電事故 > 北米大停電
発生年月日 2003/8/14
停電都市 アメリカ北東部
影響人員 5000万人
被害状況 被害額
経済活動の停滞に伴う域内総生産の落ち込みが約8億ドル
貯蔵施設の電源切れで廃棄処分を迫られた冷凍・生鮮食品が約2億5000万ドル
事故原因

北米大停電、オハイオ州の送電線障害が原因か? 
8月16日、北米大停電について、電力会社で組織する北米電力信頼度協議会は、オハイオ州の送電線障害が原因との見方を示した。写真は停電前の13日夜の米北東部(左)と発生後14日の同地域。衛星写真(2003年 ロイター)(ロイター)13時11分更新

オハイオ州送電線
(8/14 衛星写真)

電気の消えた
ニューヨーク
米送電網整備費用500─1000億ドル、複雑な規制が阻害

[サンフランシスコ 17日 ロイター] 14日にアメリカ北東部を中心に発生した大規模な停電については、国内の送電網の不備も指摘されている。専門家によると、再発防止にかかる費用は数年間で500億─1000億ドルとも指摘されているものの、法制度が複雑で十分な設備投資がなされにくいのが現状、という。
 14日に発生した大規模停電では、5000万人の生活に影響が出たとみられているが、原因については未だ解明されていない。ただ、その後の調査で、オハイオ州クリーブランド市近郊にある3本の送電線に問題があったのではないか、との見方が出ている。
 送電網に設備投資がなされにくい背景には、連邦および州規制の複雑な絡み合いがある、とみられている。
 ハーバード大学のウィリアム・ホーガン教授(公共政策学)は、「送電線規制が首尾一貫していないというのが主要な問題のひとつであり、そのことが設備投資意欲を阻害している要因である」と指摘している。
 また、発電事業に比べて送電線事業は規制が厳しく、しかも収益に乏しい、といった声も上がっている
電力逆流、次々と停止 防止機能も働かず
 
急激な負荷→安全装置作動→北米大停電
停電が起きた主な地域

停電が起きた主な地域

 米国北東部とカナダで発生した14日の広域停電は、オハイオ州の送電線で起きた一時的な停電や電圧低下が発端となった可能性が高くなった。その後、負荷の急激な高まりから安全装置が次々と働き、ドミノ倒しのように周辺の発電所が次々に送電を停止。わずか2時間で、5千万人に影響を及ぼす大規模停電につながったと見られる。こうした事態の背景には、「途上国並み」(リチャードソン前米エネルギー省長官)ともされる送電施設や送電網の老朽化を指摘する声もあがっている。

 ●引き金

 オハイオ州の電力会社ファースト・エナジーの発表によると、大規模停電の起きる約2時間前の米東部時間14日午後2時ごろ、同州のイーストレイク火力発電所内で、原因不明の一時停電(トリップ)が発生した。北米電力信頼度協議会(NERC)によると、その後、クリーブランド南部を通る同社の3本の送電線で、午後3時6分から一時停電や電圧低下が5回にわたり起きたという。

 一時停電や電圧低下自体は「電力需要の大きい夏場では珍しくない」といい、送電線に過重な負担がかかった場合や、鳥や樹木などが触れた場合に起きるという。ただこうした問題に備えてコンピューター制御による警報システムが組み込まれているが、今回は作動していないという。

 ●9秒間

 障害が起きたオハイオ州内の送電線は、バファローやデトロイト、クリーブランド、トロントなどエリー湖周辺の都市を環状に結ぶ送電網(エリー湖ループ)の西端部を構成している。

 因果関係は不明だが、オハイオの送電網で最後の障害が起きた2分後の午後4時8分には、エリー湖ループの北側で、東に流れていた30万キロワットの電力が突然逆流し始め、50万キロワットが西に向かったという。その結果、電圧低下が起き、「発電所や送電施設が機器の損傷を防ぐため、送電を自動的に停止した」(NERC)という。

 専門家によると、発電所の送電が止まった場合、周辺の発電所が肩代わりをするが、急激な電力需要の高まりで、負荷が大きくなりすぎると、安全装置が働くという。

 AP通信によると、大停電が起きた午後4時11分までに送電を停止した発電所は、原子力発電所22カ所を含む、100カ所以上に上った。これらが停止するには「わずか9秒間」(NERCのゲント会長)しか、かからなかった。

 電力が逆流し、送電が停止した理由については「まだ分からない」(同会長)としつつも、「(送電網は)障害の連鎖を防ぐシステムになっているはずだが、今回は機能しなかった」(同)と述べ、人為的なミスがあった可能性も示唆した。

 ●湖囲む環状送電網、連鎖的被害が拡大

 米・カナダの大停電の発端とみられるエリー湖周辺の送電網は湖を囲むループ(環)状だ。この形状では、どこかの発電所の異変で周波数(米国では60ヘルツ)が少しずつ狂う「同期はずれ」という現象が起きると、電力が逆流することがあるという。

 財団法人電力中央研究所・狛江研究所の谷口治人副所長によると、電力逆流が起きれば、電気が送れなくなることがある。エリー湖の場合はループが大きく、送電できない範囲が連鎖的に広がったとみられる。

 65年、電源開発の御母衣(みぼろ)発電所(岐阜県)に雷が落ち、関西電力管内の半分以上で停電する騒ぎとなった。このときも大きなループ状の送電網だった。日本ではこれを契機にバックアップの送電線を組み合わせるなどして、単純なループ状の送電網は使わなくなった。

北米電力信頼度協議会(NERC) 北米で幹線電力供給の信頼性、安全性などの確保を目的とする非営利法人。電力事業の運営や計画についての指針を策定し、その順守を求める。また、複数の電力業者間の相互接続網の円滑な運営を促進する。米国、カナダの全土とメキシコの一部をカバーする10の地域協議会で構成。各地域協議会は、送電業者、卸売り・小売りの電力業者、州や自治体の関係機関、電力消費者まで幅広いメンバーから成る。
【米・カナダ大停電の主な経緯】(AP通信などから)
14日14:00ごろ  米オハイオ州の発電所で送電線に障害発生
15:00すぎ  オハイオ州の送電網での障害が拡大
16:08  米北東部とカナダで電力供給が不安定に
16:10  ミシガン州の発電所が電力供給を停止
16:11  オハイオ州の発電所が電力供給を停止。同州やニューヨーク州の原子力発電所が電力不足から相次いで供給停止
23:00  北米電力信頼度協議会(NERC)が供給停止になった発電容量のうち3分の1以上が復旧と発表
15日未明  ニューヨークのタイムズスクエアなどで電力供給が一部復旧
9:00  NERCが供給が止まっていた発電容量のうち約8割が復旧したと発表
21:00すぎ  ニューヨーク市の電力供給が完全復旧
16日早朝  ニューヨーク市内の地下鉄が運転再開
10:00  被害地域の全域で電力供給が再開。一部では調整のための計画停電を実施

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